工事事業におけるアウトカム指標の算出方法|活用する目的3選と設定ポイント3選
施工管理のアウトカム指標とは
アウトカム指標とは、施策や事業の実施により生まれる成果や効果を表す指標です。
例えば「交通安全の推進」という施策の中で、「歩道の設置」という事業がある場合、「歩道を年度内に○m設置する」は「アウトプット」であり、その成果である「交通事故件数が○%減少する」が「アウトカム」になります。
このアウトカムに着目して評価するのが「業績測定」で、欧米諸国での基本的な評価方式です。
アウトカム指標の必要性
今までの工事は、資源の投入(インプット)と工事結果(アウトプット)の評価にとどまっていました。
しかし、この評価方式の場合、道路整備における慢性的な交通渋滞や多発する交通事故などの課題は、解消されず残ってしまいます。
そこで、道路利用者の視点に立ち、サービス向上を目指して導入されたのが、道路サービスの成果(アウトカム)による指標です。
アウトプット指標とアウトカム指標との違い
アウトプットとアウトカムの違いには、少し分かりづらい部分があります。
端的に説明すれば、「アウトプット」は事業を行うことによって直接生じた成果物や事業量、「アウトカム」は施策や事業の実施により発生した成果や効果を指します。
交通安全の推進を目的とした歩道の設置を例に説明すると、「歩道を年度内に500m設置する」がアウトプットで、「交通事故件数が減少する」がアウトカムです。
工事事業におけるアウトカム指標の算出方法
道路工事におけるアウトカム指標として、道路渋滞による損失時間を採用しています。
道路渋滞の損失時間は「区間の距離/通常時の旅行速度₋区間の距離/基準旅行速度」の総数×「区間交通量」×「平均乗車人数」で算出することができます。
この式によって、交通渋滞を数量的にわかりやすく表せます。なお、この指標は都道府県道以上の各区間で算出されるため、どこでも同じ数値ということはありません。
資源の投入のインプット
インプットとは「投入した資源」のことで、活用する目的に合わせて生産性指標を設定することが大切になります。生産性を上げるためには、このインプットを減らす必要があります。
なお、インプットに関しては利用者の行動は関係なく、内部努力で変化させることができる項目です。
「生産性を上げる」という意味でも、インプット減をするための日々の努力と工夫が大切と言えます。
工事結果のアウトプット
アウトプットとは、インプットによって何らかの処理を付加して出力されるものです。アウトプットを重視して進捗度を測る方法として、代表的なものに「Earned Value Management」(EVM)があります。
EVMは進捗度を出来高でとらえるため、実態を反映しやすいというメリットがある一方、統一的な運用体制や定量化ルールの構築が求められます。
アウトカム指標を活用する目的3選
ここまでインプット・アウトプット・アウトカムの違いやどういったものかを解説してきました。最近の業績評価はアウトプットよりもアウトカムを重視する傾向があります。
それは、アウトプットよりもアウトカムで評価すれば客観的評価ができるからです。また、アウトカム指標を使えば、過去データと比較が可能だったり、明確な結果が出たりといったメリットがあります。
ここでは、アウトカム指標を活用する目的を3つご紹介します。
アウトカム指標を活用する目的1:客観的評価が出来る
アウトカム指標を活用する目的の1つ目は「客観的評価が出来る」です。
例えば、「町が安全だと思う割合」といった住民の主観に基づいた指標を設定してしまうと、安全という状態をどう定義するか個々人で異なるため、客観的な評価ができません。
アウトカム指標は、どういった成果が出たかを定量的な数値で出すため、客観的な評価が可能です。
アウトカム指標を活用する目的2:過去データとの比較が可能
アウトカム指標を活用する目的の2つ目は「過去データとの比較が可能」です。
アウトカム指標は定量的な実績値で評価するため、過去のデータが蓄積されていきます。そうすることで過去のデータと照らし合わせた評価が可能です。
基本的には、1年ごとに実績値を把握することが望ましいと言えますが、それが難しい場合は、中間成果指標を設定することになります。
アウトカム指標を活用する目的3:明確な結果が出る
アウトカム指標を活用する目的の3つ目は「明確な結果が出る」です。アウトカム指標は定量的な数値として出るため、明確な結果を出すことができます。
公共事業のサービスなどでは、市民への説明をする際に明確な結果を提示する必要があります。アウトカム指標は利用者の視点に立った評価基準を採用している観点からも、説明のための指標として有用です。
アウトカム指標の設定ポイント3選
ここまでで、アウトカム指標は客観的な評価ができ、過去データと比較できることが分かりました。また、アウトカム指標を使えば、明確な結果を出すことも可能です。アウトカム指標は業績を評価する上でさまざまな点で有用です。
それでは、アウトカム指標を設定する際に、気を付けるべきポイントはどこにあるのでしょうか。
ここからは、アウトカム指標の設定ポイントである目標設定・目標条件・期間の3つについて解説します。
アウトカム指標の設定ポイント1:目標設定を明確にする
アウトカム指標の設定ポイントの1つ目は「目標設定を明確にする」です。
アウトカム(成果)は、できるだけ利用者にとって分かりやすいものにしましょう。そうでなければ、利用者に説明をする際に理解してもらえない可能性があるからです。
より分かりやすくするために、指標名の専門用語を使わずに、直感的に理解できる指標名にするのが望ましいと言えます。
アウトカム指標の設定ポイント2:目標条件の選定
アウトカム指標の設定ポイントの2つ目は「目標条件の選定 」です。
アウトカム指標を設定する際には、目標を達成するためにどんな指標を選べばよいか決める必要があります。
重要な条件としては、データ収集が簡単な指標であることが挙げられます。また、毎年データを取ることができ、経年変化がわかる指標にすることも大切と言えます。
アウトカム指標の設定ポイント3:期間を明確にする
アウトカム指標の設定ポイントの3つ目は「期間を明確にする」です。 アウトカム指標を設定するときは、期間を明確にする必要があります。
期間を明確にするためにも、選ぶ指標はある程度長い期間使うことができる指標を選びましょう。 そうでなければ設定した期間内のデータが取れなくなる可能性があるからです。
また、社会情勢などによって激しく変化するような不安定なものも、指標としては避けましょう。
効果的なアウトカム指標を設定しよう
アウトカム指標とは、施策や事業を行うことにより発生する効果や成果を表す指標です。アウトカム指標には客観的な評価ができる、過去データとの比較が可能といったメリットがあります。
また、アウトカム指標を設定する際には、目標設定や期間を明確にする必要があり、目標条件の選定も注意が必要です。
目標達成を実現するためにも効果的なアウトカム指標を設定するように心がけましょう。
編集部
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