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公開日時 2019.11.01
最終更新日時 2022.04.06

建物のライフサイクルコストと施工管理技術者

企画段階から運営管理までトータルマネジメント


建物のライフサイクルコストを低減するためには、企画段階から建築スタッフ、設備スタッフ、そして、運営管理スタッフを一堂に会して、プロジェクトを推進させます。さらに、建物総トータルコストを抑えるために、プロジェクトをしっかりとまとめ上げるマネジメント力をもったマネジャーが必要となるのです。

総合的に建築投資コストから運営管理コストをマネジメントするために必要な能力としては、各セクションのスタッフとの調整能力、プロジェクトの進捗管理能力、プロジェクトにかかる費用の数値管理能力等の高さになります。

建築する建物のことをよく理解している上で、意匠設計上、運営管理上の課題をとらえ、発生する諸問題を解決でき、建物のイニシャルコスト、ランニングコストを低減させられることがマネジャーの資質として必要になります。

建物の施工実績が豊富で、経験のある施工管理技術者がプロジェクトのマネジャーとして事業推進するのが一番適していると考えられます。

お客様の建物設計に対する要望は主に、どのように建物を使いたいのか、そしてどのような機能性が必要であるのか、デザインはどのようにしようか?といった内容になります。その要望内容を、機能的にデザイン的に十分満たせるように設計するのが設計事務所の仕事であり、プロジェクトの根幹を占める部分であります。

通常多くの場合には、お客様の要望を組み込んだ設計図面が出来上がってから建設会社に見積を依頼して、予算とのすり合わせを行うケースが多いのですが、図面が出来上がってからでは建築費が予算オーバーしていており、すり合わせに手間取ることが得てしてあります。

そして、建築予算とのすり合わせに力が注がれてしまい、建設後のランニングコストを低減するための施策まで手が回らずに、結果として建築費も高くつき、ランニングコストもかかる建物を作っているケースは意外と多いものです。

お客様の要望を図面に落とし込む企画段階から機能的要望をとらえながら、デザイン性も保ち、建築費、その後の運営コストもトータルで抑えることが大切です。建物の完成後、コストを抑えた運営させるためには、その企画段階から経験豊富な施工管理技術者をトータルマネジャーとして配置し、数値的観点から総合マネジメントを行うことが重要になってきます。

建築費用が予算超過してしまう例としては、機能性及びデザイン性が先に立って図面が完成してしまうことです。結果、実際の建物建設において、建物構造上コストが高くつくことになり、また機能性優先の設備・機材配置により、ランニングコスト面に目が届かずにプロジェクトが進んでしまうことを起因としたケースが多く見受けられます。

このような状況でバリューエンジニアリング(VE=機能性を落とさない減額提案)を行っても、建設費の2~3%のVE提案が上限で、それ以上のVEは機能性、デザイン性に影響を及ぼします。

初期の企画段階から運営管理まで数値的にマネジメントできる施工管理技術者を配置して、ライフサイクルコストマネジメントさせる場合には、トータルコストで20%の削減も可能であるとの提言もあります。いかに初期段階からトータルで建物をマネジメントすることの大切さが分かると思います。

ライフサイクルコストマネジメントの重要性


建物のライフサイクルコストをトータルで低減することの重要性はますます高まってきています。現在、企業会計上重要なのは、人材、資金、技術、情報、そしてファシリティであると言われているのです。

ファシリティとは保有する、施設、保有不動産、そこで働く人の人件費、発生するエネルギーコスト及び管理費用、修繕費及び更新費用、税金その他の諸費用全般を表します。企業会計上ファシリティ費用が占める割合は高く、その収益性、機能性、そして収益性を落とさずに保全を行い経営の効率化を図る必要が求められています。

そのための考え方の基本となるのが、ライスサイクルコストマネジメントです。企業会計上の保有資産全般のトータルマネジメント手法として、ファシリティマネジメント手法が、各収益物件の適切な保全を行うこととされています。さらに収益の向上、最適化を目指すプロパティマネジメントの手法が欧米から導入され、日本でも浸透してきています。

欧米では、ファシリティマネジメントもプロパティマネジメントも保有施設の最適化、収益性の向上確保は、優れたマネジャーによるトータルマネジメントにより実施され、優秀なマネジャーは高額の報酬とともに、社会的な地位の向上も得られる技術職として認識されています。

日本の場合、建物などの不動産は、建物土地価格に対する価格的評価が主な見方になっており、保有資産として不動産を取得して、その土地建物価格が上昇することによって、保有資産としての価値が上昇し、金融的にも担保評価価値が上がるという構図でした。

しかし、バブルの崩壊を経験して、従来の土地神話が崩壊したのち、不動産価値をその不動産から上がる収益により評価をする、収益還元法へと変わってきました。収益還元法による不動産評価手法は、新築はもちろん中古物件であってもその価格査定、建物評価鑑定は厳格化され、不動産の流動化を高めるとともに、ファンド資金を活用した不動産保有プレーヤーの幅を広げることとなりました。

日本でも建物の評価システムが厳格化され、不動産の流動化が進むに伴って、ファシリティマネジメント、プロパティマネジメントの手法が広まるとともに、ファシリティマネジャー、プロパティマネジャーの数も増えてきています。しかしながら、欧米に比べてマネジャーのポテンシャル、評価及び報酬についてはまだまだ発展途上です。

ライフサイクルコストマネジメントの目指すところは、総トータルコストを減らして、収益を最大化することにより収益性を高めながら、適正な管理保全、リノベーションを実施して建物が経年してもその価値を落とさないことが目的です。

イニシャルコストを削減するには、設計者、施工者の知恵が必要であり、ランニングコストを削減するためには建物管理会社の知恵が必要となります。従来の各専門家による分業が主な手法では、予算上の問題が起こってから対処方法を考えるといった流れになりやすいことが現実でした。

そこで総トータルコストを下げる施策を実施するためには、設計者、施工者、建物管理会社等の各専門家のノウハウを総合的にプロデュースできるマネジャーが、全体最適の施策を策定し、全体予算に沿った建築計画を進めることが重要です。

同じ収益を生む建物でも、建物構造上、デザインによって建築費に大きな開きが出るものです。お客様の要望に沿った建物であっても全体像をつかみ建物躯体、デザイン、ランニングコストにかかる余分なコストを発生させる設備計画がないかどうか、企画設計と同進行でマネジメントする優秀なマネジャーには高額な報酬を出しても、その見返りは大きいことを知っているからです。

建物のライフサイクルコストを最適にマネジメントできるマネジャーをいかに見つけられるかによって、企業会計上のファシリティコストの効率性、経営の効率性を上げることができるか左右されるのです。

そして、不動産の流動化が進んでいる現在では、いつの時点でも流動化できる資産として価値を維持することが、スピードが重要な経営環境において重要性が増しています。

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