バフ仕上げの目的

加工された金属部品や金属製品は、真っ先に表面の光沢や滑らかさに目が行く方も多いでしょう。これを実現しているのは特殊な加工で、表面粗さを滑らかにする加工の「バフ仕上げ」と言いいます。

ここではまず金属に施されることが多いバフ加工、バフ仕上げの目的について説明していきます。どのような効果があるために行われる作業なのか確認していきましょう。

バフとは？

バフとは金属加工する工具のことです。金属を傷つけない柔軟性のある布やゴム、皮などでできていて、英語で牛などのなめ革や革張りの研磨棒という意味があります。

「バフ仕上げ」とは、この皮でできた研磨剤に砥粒と呼ばれる加工に必要な粉をつけて、回転させながら金属加工していく技法です。建材から厨房機器、車の部品まで、さまざまなものに使われている加工法です。

バフに表示されている数字の意味

バフに表示してある数字記号は、研磨することでどれだけ金属が磨かれるかを表しています。数字が大きいほど金属がきめ細かく磨かれるのが特徴です。

#150や#200などのバフを使う2㎛Rz以下の表面粗さに仕上げる粗研磨、#400のバフを使うメッキやステンレスなどに用いられる中研磨、#600～#800のバフを使う表面粗さを0.2㎛Rz以上にする仕上げ研磨、#800のバフ研磨を使う鏡面仕上げなどがあります。

建材の一般的なJIS基準は、ヘアライン仕上げと呼ばれる研磨方法になっています。

バフ仕上げの加工方法

バフ仕上げの加工方法には一般的なバフを使って研磨する方法の他に、電解研磨という方法があります。ただ金属の表面を磨くだけではなく、研磨する工程で必要な作業によって生じるデメリットを改善できる方法です。

ここからは一般的なバフ仕上げとは異なった特徴がある電解研磨について解説していきます。

電解研磨とは？

バフ仕上げの過程で金属表面に残ってしまっている細かい油汚れは、研磨後の洗浄で完全に取り除けず、ある程度残ってしまいます。この細かい汚れがついてしまうのを防げるのが電解研磨の特徴です。

電解研磨とは電解反応を使って、ステンレス板やチタン、アルミなどの金属の表面にある凹凸を減らし、クロムリッチな不動態皮膜を作ります。

バフを使った無電解での加工方法よりも細かい加工ができるのが特徴で、汚れを残さずに加工したい意思を実現します。

バフ仕上げのメリット6つ

バフ仕上げにはさまざまなメリットがあります。代表的なものは表面がツルツルになり、見た目が良くなることですが、それ以外にも機能性・安全性の向上などの効果もあります。効果を知っておくと、バフ仕上げがどれだけ必要かが分かります。

ここからは、身近なものにも用いられているバフ仕上げの6つのメリットを紹介していきます。

1：バリを除去できる

バフ仕上げをはじめとする金属加工は、加工する上でどうしても金属の細かい残留物がついてしまいます。これは他の技巧でも共通しているデメリットです。また加工中に細かい付着物が出るのもデメリットですが、これらの残留物をバリと呼びます。

バフ仕上げでは、加工の途中に出た目に見えないほど小さなバリを取り除けます。素材の表面をキレイにできるので、厨房器具などの加工にも使われている技術です。

2：凹凸や傷を除去できる

金属表面にある指で触らないと分からないほどの小さな凹凸を減らして、滑らかにでき、金属表面についた傷も取り除けます。表面が平たんになって触り心地がよくなるだけではなく、光沢のある金属部品に仕上げることができます。

バフ仕上げは細かい凹凸があると正常に作動しない精密機械の部品や、タイヤのホイールなどにも使われています。

3：表面に付着したものを除去できる

金属製品の表面についた細かいカスや汚れをバフ仕上げで取り除けます。加工物を削った時に出る切粉や溶接ビートなどのゴミをキレイに除去できるので、砥粒加工による金属製品に有効です。

細かい汚れがあると支障が出てしまう調理器具や精密機械の部品などの加工に用いられることが多いバフ仕上げで、重要な効果のあるものと言われています。

4：表面を平らにし乱反射を防ぐ

バフ仕上げにより、金属の表面を滑らかにすることで、光が乱反射するのを防げます。車のホイールやサーフボードなど、日光が当たるところでよく使われている金属製品の場合は、光の乱反射が事故に繋がってしまう可能性があります。

そのため、バフ仕上げをすることで、金属製品の見た目をキレイにするだけではなく、事故防止にも繋げられるでしょう。

5：鏡面仕上げにより見た目が美しくなる

#800の鏡面仕上げを施すことで金属部品の見た目が美しくなり、部品を使って完成した建築物、配管、車などの製品の出来栄えを引き上げる効果も期待できます。機能性だけではなく、見た目のキレイさ、おしゃれさも上がる加工法と言えるでしょう。

表面仕上げされた部品や製品は高級感があり、製品が良質なものという印象を与えます。

6：製品としての精度を高められる

バフ仕上げをすることで製品としての精度を高め、機能性を上げることができます。金属部品同士の抵抗と摩擦係数を軽減し、故障するのを防ぎます。またサンドペーパーなどを使って手で磨くのとは違い、均一な加工ができるため、製品の質も高くなります。

ムラなく美しく磨かれた製品は、細かい歯車などの部品の動作を滑らかにします。

バフ仕上げのデメリット

デメリットは面粗度によって違いがあります。バフ仕上げのデメリットはメリットよりは少ないですが、加工を施す前に知っておいた方が良いでしょう。

面粗度によるデメリットの違いで主なものは、金属製品にバフ仕上げを行う際の難しさです。鏡面磨きをはじめとするバフに表示されている数値が高い加工は熟練の技が必要となるため、職人の技術によって素材ごとに仕上がりにバラつきが出てしまうことがあります。

面粗度による違いがないデメリットは、バフによる研磨の際に研磨する金属や素材にバフの素材が付着してしまうことです。バフの皮を、金属やその他の表面を磨きたい素材にこすりつける方法なので、このデメリットを防ぐことは難しいでしょう。

バフ仕上げをすることができる材質

バフ仕上げに適している素材は、金属以外にもあります。どの素材に施す場合でも、表面の研磨をした時に研磨剤が表面についてしまうデメリットは変わりません。目に見えない細かいゴミが気になる場面で使用する部品には電解研磨がおすすめです。

ただバフ仕上げを行うことで耐久性や機能性が上がるというメリットも、素材による違いはありません。幅広い素材にバフ仕上げは施されているので、身近な技法と言えます。

金属

金属でバフ仕上げできるものはステンレス、チタン、アルミなどです。日常的によく使われているほとんどの金属に施せる加工であるため、暮らしの中で使用する多くのものにバフ仕上げがされています。

ステンレスがもっとも多くの種類で加工できますが、他の金属も複数種類に加工できます。バフ仕上げできる金属の種類別の細かい種類については、以下の表を参考にしてみてください。

金属以外

金属以外の素材にバフ仕上げを施すなら、セルロイド、エボナイト、アクリル、ABS樹脂などの樹脂素材が適合します。金属と同じように、バフの数値が大きい鏡面仕上げのような高度な技法も使えます。また木工製品にもバフ仕上げすることもできます。

サーフボードやロングボード、厨房機器のような水にぬれる場所で使う製品、部品にも、バフ仕上げをすることで、水の浸食を防げます。製品のカビ、腐敗、水による変形などを防止できるので長持ちできます。

バフ仕上げについて理解しよう

バフ仕上げについて理解しておくことで、金属製品や樹脂製品などの機能性、耐久性、仕上がりを格上げできます。細かい凹凸がなくなるので部品が滑らかに動くようになり、金属部品が劣化してしまうのを遅らせ、長持ちできます。

部品の見た目を良くするだけではなく、安全性や機能性といったメリットもあります。製品の製造工程を見直し、さらに仕上がりを向上させるためには、製品の表面処理の工程にバフ仕上げを追加してみましょう。